たま樹の「 日本舞踊 コラム」
2025/08/03
『日本舞踊のストーリー』
お稽古にいらっしゃった方から
「日本舞踊にストーリー性があると思ってなかった」
と聞くことが何度かありましたので
今回は日本舞踊のストーリーについてです
「三つ面子守」常磐津 文政12年(1829年)9月
元気に走って現れた子守の女の子
神社の境内で赤ちゃんを寝かしつけ
笹についているお面で仕方話(落語のように一人で色々な役を演じる)をします
お嫁入りするというおかめと、焼きもち恵比寿さんの痴話喧嘩に、ひとの恋路が羨ましいひょっとこが割って入る
賑やかで明るい調子が楽しい演目です
「恋の菅笠」大和楽 昭和62年(1987年)
『お夏清十郎』の大和楽バージョン
江戸時代に本当にあった身分違いの若い二人の悲恋を舞踊にしています
小説には 井原西鶴『好色五人女』
舞踊曲には 常磐津『お夏狂乱』坪内逍遥の作詞
などがあります
狂い彷徨い歩くお夏が儚くも美しい演目です
「流星」清元 安政6年(1859年)9月
七夕、彦星と織姫が年に一度のデートの夜
「ご報告!ご報告ー!」と、飛び込んできた流れ星の報告とは
雷の五郎介が端唄のお師匠さん宅へ落っこちて、端唄を覚えて帰ってきたものだから
雷を鳴らすにも端唄で鳴らす
それに呆れた奥さんとの大ゲンカ
子雷は泣いてとめ、隣のおババが仲裁に
どう決着がつくのか、そこも面白い演目です
「藤娘」長唄 文政9年(1826年)9月
藤の精霊が恋心を踊る
幻想的に現れたと思ったら、つれない男への愚痴をならべ、ほろ酔いになって(藤音頭バージョン)、元気に踊りはじめたら急に眠くなり
「あら、もう夕暮れだわ」と去っていく
ストーリーというより、役柄と設定がベースとなり、小さな情景のつながりが流れていく
ひたすら可愛いく美しい演目です
庶民の暮らしからバトル物「将門」やホラー「かさね」まで幅広く楽しめます
なぜこんなにストーリーがあるのかというと、日本舞踊は歌舞伎の舞踊パートを取り出しているからです
もちろんセリフのある演目もあります
大道具や衣装のある『衣装付き』の他に
『素踊り』ではシンプルな背景と着物で
和紙に筆で絵をのせていくように
踊りと音楽で役柄や心情、物語や自然を表現します
素踊りならではの爽やかな演目も沢山あります
「私が楽しむ日本舞踊」には
舞台で踊る、観てもらうだけではなく
様々な登場人物、様々なストーリーを楽んで
読んだ本のように、知ったこと、思ったこと感じたことが積み重なる楽しさがあります
今回は書きながらお絵描きも楽しませて頂きました
またそんな機会もあるといいな
次回『日本舞踊と身体』